アパート経営を考えたきっかけ
「◯◯(僕の名前)、お父さんが急に住宅メーカーの人を呼んで、アパートの話を聞き始めたの」と、会社に行く前にかかってきた電話の一声は、母の心配した声だった。
当時、不動産投資なんて全く興味のなかった僕は、変な借金を背負わせられたら大変と、週末に自宅に帰り、父、母と緊急会議。
父は、倉庫もだいぶ老朽化してきたから、なにか活用方法はないかと△□ハウスに声をかけただけだよ。と面倒くさそうに答え、その後はアパートの話は一切聞かなくなった。当時、母とは、早めにわかってよかったねと話したのを今でも覚えている。
現在の僕だったらその時どうしていただろう?
おそらく、アパート建築に賛成して、いっしょになってあれこれ意見を戦わせながら理想のアパートを語っていたかもしれない。
そもそもアパート建築のような大きな投資は相続を前提にして行うべきものだと今は考えている。(といっても、うちは子供いないので偉そうなことは言えないが)
本当の旨味は、借り入れの返済が終わった後にやってくるのだろうが、50近くで建設をした僕の場合、返済を終える頃にはもうヨボヨボの爺さんである(それまで生きているかさえわからない)。
そうした事を考えると、あの時父の背中を押すだけの知識を持っていれば、今もっと余裕を持った生活ができていたかもしれない。
僕がアパート経営に興味を持ったのは、会社の先輩であるG氏との出会いがきっかけである。
G氏とはIT系の会社で一緒に働いていた。
G氏はガツガツ仕事をするわけでもなく、目標予算の達成なんか眼中になかったり、メンタルを壊してしばらく会社を休んでいたり、会社一筋の当時の僕からすると、あまりいっしょに仕事をしたいと思うタイプではなかった。
直接一緒に仕事をすることはなかったが、ある飲み会で驚きの告白をされた。
当時大きなプロジェクトがコケて凹んでいた僕にとって、G氏の話は僕のサラリーマンとしての価値観を大きく揺さぶるものであった。
C社の場合
C社の営業マンは、僕の実家のある静岡県で最近まで営業をしていたこともあり、地場の金融機関や、市町村の情報にも非常に長けていた。
加えて、経験豊富で話もうまい。話を聞いているうちにアパート経営はいいもんだという気にさせられた。
また、実際にその営業マンの手掛けたアパートを幾つか見学したが、どれも素敵な間取りで、僕は彼の提案にどんどんのめり込んでいった。
一方かみさんはというと、常に一歩引いて話を聞いており、提案以上に営業マンを見ていたように今では感じる。
営業マンが家賃の下落はそれほど大きくないと言うと、かみさんは、僕の友人の「正直な」A社の営業マンに相談し、実際の家賃下落幅を想定し、それに対する見解をC社の営業マンに求める。
収支計画についても、甘い提案を見逃さず、なりゆきの良い計画だけではなく、賃料が下落した場合のシミュレーションを求めたり、他の2社と比較して少し厳し目の対応をしているようにも見えた。
経験豊富な営業マンだけあって、非常に駆け引きがうまかったが、B社のように契約を無理強いすることもなく、時間をかけてこちらの納得の行くまで相談に乗ってくれた。
僕とかみさんの営業マンに対する評価は大きく割れたが、これがその後、結婚以来最大の大げんかに発展することは、この時点では知る由もなかった。
B社の場合
B社は賃貸住宅管理戸数、住宅供給戸数いずれもNo1のまさに賃貸住宅の最大手である。
営業は、入社してまだ浅い若手営業マンくんと、エリアのリーダーっぽいベテラン営業マンのペア。
若手営業マンくんの提案をベテラン営業マンがフォロー(指導?)する形態で商談が進んでいった。
商談を進めるうちに、ベテラン営業マンの対応がすごく気になった。
若手営業マンくんの指導というより、美味しいところを自身で持っていくような話し方、こちらからの質問の回答より成約を急ぐ姿勢。
若手営業マンくんは、社内のリソースをうまく使って、経営アドバイザーのような人を同行させ、丁寧に質問に答えてくれたり、物件の見学も積極的に行ってくれたが、商談が半年を越える頃になると、ベテラン営業マンの同行が無くなり、若手営業マンくんの訪問も徐々に減っていった。
僕としては、最大手といいつつも、A社、C社のアパートと比べると、だいぶちゃっちく感じていたので、特に引き止める気も起きなかった。
しかし、一つ許せないこと。
1年ほど過ぎて、最終的に1社に絞り込もうという時期に、突然携帯にベテラン営業マンからの着信が入った。
ベテラン:「どちらかに決まりましたか?」
僕 :「◯社さんの提案に決めたところです。」
ベテラン:「うちは、○社さんの最終提示額より1,000万円値引きますがいかがですか?」
こんなひどい営業があっていいものだろうか?
そもそも、住宅の見積もりって、こんなにザルなの?
腹が立ってきて、「そんないい加減な商談はしたくありませんので、もう電話しないでください。」
とお断りした。
その後、2回保ほど若手営業マンくんからの着信があったが、こちらからかけ直すことはなかった。
A社の場合
僕として一番期待していた会社がA社だった。
この会社は当時僕が勤めていた会社の関連会社で、だいぶ値段は高いが、その分災害に強い、作りがしっかりしているという印象を持っていた。
何より担当営業が僕の方でお願いした同期の仲間であったため、変な腹の探り合いもなく本音で話ができた。
弱点としては他の2社と比較して専門のサブリースの会社を持っていないこと、友人ということもあり、安全によった提案になりがちといった点があった。
ほかの2社が2階建8部屋の提案だったのに対し、A社の提案は2階建6部屋、建築費用は他の2社より多少安く、土地を少し余らせて将来的に自宅を建てることを提案してきた。
また単にアパート建築の提案にとどまらず、アパート経営について不安をいだいていた僕とかみさんにファイナンシャルプランナーを紹介してくれ、アパート経営のリスクに関する情報も積極的にインプットしてくれた。
また銀行の借り入れに対する返済方法についても他の2社がマニュアルに沿った返済プランしか提案してくれなかったことに対して、有利な地銀を探してくれたり、元利均等返済と元金均等返済のどちらが僕にあっているかの検討など親身にやってくれた。
都内近郊の、友人が手掛けているアパートを幾つか見学させてくれ、もし自分が住むならA社のアパート、マンションに住みたいという気持ちになっていた。
テンプレでもあるの?
3社との打ち合わせが始まった。
土、日のいずれかに面談の場を設定して、概ね1時間程度の打ち合わせを3社とおこなう。
当初こちらは情報収集程度のノリで始めたが、各社の営業さんはここぞとばかりアパート経営の旨みをPRしてくる。
大体午前中に1社、午後に1社の話を聞くだけでくたくたになる。
これが結果、約1年続いたが、都度お茶菓子を準備してくれて、話に付き合ってくれたカミさんには感謝するばかりである。
こちらからは、実家の住所を伝え、大まかな予算(というか、預貯金と年収をざっくり伝えただけだが)を伝えて、どんなものが建築可能かを一次提案してもらう。
驚いたのは3社から出てきた提案が、裏で示し合わせたように似通ったものだったこと。
恐らく3社は競合することが多く、各社の良いところに合わせるうちに、土地面積と予算が同じであれば似たようなものになってしまうのかもしれない。
3社のうち2社が2階建、8部屋、1社が2階建、6部屋、概ね同じような金額だった。
そして各社部屋は2LDK以上、駐車場は一部屋2台の16台前後の内容であった。
アパートというと1Kや1DKのイメージが強かったが、どうやら最近は2LDK以上が主流になっていて、駐車場もファミリー向けを意識して2台以上が必要らしい。
トイレや風呂もユニットは敬遠されるとのことで、そういえば僕とカミさんもそうした視点で今の部屋を決めたことを思い出した。
2階建6部屋の提案は、実は僕が勤めている会社の関連会社で、営業も友達であったこともあり、他社より、より僕の懐具合を知っていて、将来実家に帰った際に自家を建設できる余裕をワワワをわわわ土地、預貯金面で残した一歩踏み込んだ提案だった。
アパートや駐車場は似通ったものであったが、営業さんの進め方は各社特徴があった。
その話は次回で。
考えているだけでは始まらない!
考えていてもただ時間がすぎるだけ!と思い、アパート経営を軸に検討を始めることにした。
そこで住宅メーカーのWebサイトから相談を入れることに。
全国展開しているA社、B社、C社。
地場の工務店D社。
不動産運用を売りにしているE社。
A社、B社、C社からは、問い合わせ当日、翌日には連絡が入り、東京の自宅での打ち合わせがあっという間に決定。
D社は、実際に実家まで見に行ってくれたようだったが、今ひとつ対応が悪い印象を受け、早々にコンタクトをするのをやめた。
E社は対象とするエリアが実家から外れていたため、先方よりお詫びの連絡を頂いた。
結局3社と話をすすめることになったが、それからが大変だった。
僕もかみさんも、もちろんこれまでアパート経営をしたこともなく、自宅も立てたこともなかったので、価格の相場もわからないし、そもそもお金の算段もついていなかった。
こちらとしては軽い相談のつもりで連絡したものの、相手からすると良いカモ(いやお客さん)。意地でも取ろうと本気で話を持ってくる。
ほぼ隔週で3社中2社の話を聞き、さらに建築中のアパート見学と、なかなか大変な交渉となった。
営業さんの話では、概ね半年もかからず話がまとまり建築に入るという話であったが、幸いにしてかみさんが納得しなければ先に進ませない人なので、雰囲気に流されること無く、きちんとした資料を要求しながら、着実に交渉を進めていけた。
ただ、災害のリスク、老朽化して空き室が増えた場合のリスクなど考えると、このまま建築に向けて進めてよいのか、やめるべきなのか僕自身も踏ん切りがつかない気持ちであった。
空き家の活用策は?
実家の家屋、倉庫、庭を合わせて約300坪。これをどうするかが悩みの種となった。
そのままほっとくと、毎年固定資産税をがっぽり徴収されるし、かといって人に貸せるような状態でもない。(至る所の床がべこべこで、相当手を入れる必要があった。)
また当時空き家問題がクローズアップされ始め、空き家の場合さらに税金も上がりそう。
また、倉庫も老朽化しており、夏の台風で雨樋が飛ばされたのをきっかけに解体も考えるようになった。
そんなこんなで、一念発起し真剣に空き家対策を考え始めたのが2014年の春先であった。
ネットで土地活用や空き家対策を調べ、いくつもの資料を取り寄せたり、営業の話を聞いたりした。
① 更地にして土地を売る
リスクとしては一番低いが、何せ田舎なのでそんなに高くは売れない。不動産は簡単に売却するものではないとか、何より自分の田舎がなくなるようで踏ん切りがつかなかった。
② 駐車場、コンテナを利用したトランクルーム
初期投資を抑える意味では良いアイデアだとは思うが、駅から少し距離があり完全な住宅地のため駐車場のニーズやトランクルームのニーズはそれほど多そうもない。
③ リフォームして人に貸す
近所の工務店からそうした提案をもらった。まだまだ手を入れれば十分住めるし、将来東京から戻ってきた時に自分の家になる。会社の工場が近くにあるので入居者の募集も会社に任せられる。
でも、果たして10数年後この地に戻ってくるだろうか?
また賃料と、隣の倉庫の土地と合わせての固定資産税を考えると得策とは思えなかった。
④ 老人ホームやサービス付き高齢者住宅
当時仕事で医療を絡めたビジネスを仕事で検討していたため、高齢者用の住宅を考えたが、近所が親戚で囲まれているため、説得が難航しそう。それに加えてそれなりの施設を作るとなると初期投資が大きくなる。
⑤ アパート経営
うーん、ありきたりだよなぁ。
本家でもアパート経営をやっていたが、大変だという話も聞いていた。そもそも建築にはいくらかかるんだろう?
そういえば、父が健在の頃、母から電話が入り、「お父さんがアパート建築業者の人に見積もりを依頼しているの。大丈夫かしら?」と相談され、父を諌めたこともあったっけ。
そんなこんなで、結局土地を売るか、アパートを建てるかを真剣に考えるようになった。